Tシャツはとてもシンプルなアイテムであり、製品もピンからキリまで世の中に溢れています。毎日着用する事も多いので同じものの3枚パック、色違いの3枚パックなども売られています。そこで私たちも3枚パックのTシャツを開発する事にしました、私たちの製品のほとんどはオリジナルのファブリックを使用し、ファブリックの基になる糸そのものが既存品で目的にかなわない場合は、糸造りからスタートするケースが珍しくありません。
このアプローチの真逆は、既成の原反を生地屋さんから購入して、製品に裁断し縫い上げる事。一般的には最も簡単で最もスピーディーなやり方です。
既成の生地で飽き足らない場合は所謂別注生地を織り上げます。既成では存在しない、そのブランドやメーカーだけのオリジナル生地という訳です。ただし、その別注生地にしても糸まで遡ると既成の糸を使用している事がほとんどです。私たちの要望にかなう糸が存在しない場合は、糸自体を作ります。時間のかかるとても大変な行程ですが幸い私たちにとってはそれほど特殊な事ではありません。
そこで、どうせ3枚パックのTシャツを作るのであれば、紡績の違いとそこから導き出される着心地の違いを表現してみようと思い立ちました。綿の糸を分解すると十数ミリの細い毛のようなものになります。これが短繊維。短繊維を一定方向にねじり合わせる事、撚り合わせる事で1本の糸を造ります。こうして糸をつくる行程が紡績です。
現代では、全自動で可動する強大なマシーンが並ぶ紡績工場で糸が生産されますが、機械の出現依然は手作業です。毛羽のような短繊維の方向だけを揃えた脱脂綿状の固まりの中から、手作業で繊維を引きだし糸車に巻き取っていきます。所謂「手紡ぎ(てつむぎ)」と呼ばれる行程です。